2020/08/13
久方ぶりに、手紙を書いた。
便箋というものが好きで、
気に入ったものを見かけるたびに購入していたら、けっこうな数になった。
手紙は、そう頻繁に書くものではないけれど、
だからこそ、これぞという便箋を選びたい。
手紙を送る相手の好みや、相手との関係性を考え、
ひとつひとつ手にとって、悩みながら選ぶ。
ちょっとしたサプライズを仕掛けるように、いそいそと。
願わくば、もう少し端正な字が書けたらよかったのだけれど、
などと少々ぼやきながら、2枚の便箋に言葉を綴る。
整った字、それでいていわゆる「お手本」みたいな字ではない、
その人らしさにあふれた字。
人の本質が宿っているような、
そんな字に、憧れる。
そういえば、父はまさにそんな字を書く人だった。
几帳面だけれど大胆で、武骨な字。
父はたくさんの蔵書のひとつひとつに、自分のサインを入れていた。
4年前、父は亡くなり、
あの字を書ける人は、世界のどこにも居なくなった。
父から譲り受けた本の裏表紙を見ると、
かつて、その字を生み出していた手を思い出す。