2020/08/10
最近、街をよく散歩する。
近所に哲学の道みたいな場所があれば良いのだけれど、
そうもいかないので、たいていは住宅街を歩く。
日中は暑いので、晩ごはんを食べてから、9時とか10時とかの時間帯にでかける。
その時間帯の住宅街は、生活の気配に満ちている。
カレーの匂い、お出汁の匂い、せっけんの匂い。
台所の水音、お皿どうしが触れあう、かちゃん、という音。
風を通すために開け放った窓、そこから漏れる光。
雨戸を閉めている家が多いし、一見かなりひっそりとしているのだけれど、
それでも目から、耳から、鼻から、そこに人の暮らしがあることを確かに感じ取れる。
この街に住んでいるのは、私の知らない人ばかりだけれど、
彼らの暮らしの一端にかすかに触れることで、
じんわりとあたたかく、やさしい気持ちになる。
しゃぼん玉に閉じ込められたみたいな、
しずかで儚くて、幻想的な時間だ。