2020/08/06
カーテンコールが好きだ。
敵同士だった人たちが手に手をとり、
凶弾に倒れてしまった人が生き返る。
劇中の悲しみは乗り越えられ、憎しみは浄化され、
ひたひたとした満足感だけがそこに残る。
普段は物語の世界にばかり憧れて、自分の生きる現実世界に絶望しがちな私が、
こういうときばかりは、自分が現実世界の住人であることに心から感謝したりする。
おそらく物語を追っているうちに、視点がいつのまにか変わっているのだ。
はじめは現実世界の内側、すなわち物語世界の外側から物語世界を眺めていたのに、
気付けば物語世界の内側に立って物語を見つめるようになっている。
だから、物語が終わりを迎えたそのとき、私たちの心はまだ物語世界の内側にいる。
その視点のままで、私たちは現実世界を眺める。
物語世界の内側、すなわち現実世界の外側から、現実世界を眺める。
それを可能にするのがカーテンコールなのだと、私は思っている。
外側からみる現実世界は、いつになく輝いてみえる、のだ。
現実世界の側から眺める物語世界は美しく、
物語世界の側から眺める現実世界も、それに劣らず美しい。
もしかしたら本当はどちらの世界も、そう変わりがないのかもしれない。